聖なる方の慈しみ

「山々が移り、丘が揺らごうとも　私の慈しみは　あなたから移らず」（イザヤ54・10）

昨年、多くの河川が氾濫し、人が作った堤防も大雨、大洪水によって、全く変わり果てた姿になったのを見てきました。この地上に存在するもので永遠に変わらないものは何一つないのです。

しかし、天地創造の神は「私の慈しみはあなたから移らない」と言われます。「あなた」とは直接には神に愛され選ばれたイスラエルの民を指しますが、彼らは神との愛の交わりを深めるどころか、神を裏切り、偶像を拝むようになりました。にもかかわらず、神はその慈しみの故に、イスラエルの過去の恥、屈辱をい去り、彼らを赦し、その関係を回復されるのです。

イザヤ書では、造り主なる神が、イスラエルの聖なる方と呼ばれますが、それはイスラエルの民が立派な民、聖なる者たちだからではありません。それは、イザヤ自身の信仰体験によるものです。イザヤは、神の預言者として立ったとき、イスラエルの民が堕落した姿を見て、災いだ、災いだと叫び続けました。

ところが、神の聖なる臨在を見たとき、自分が如何に汚れた存在であるかを悟り、災いだ、わたしは滅びると彼は告白します。しかしそのとき、聖なる神がイザヤに触れ聖めてくださいました。そして、彼は新しく創造され、再び神の預言者として立つことができたのです。

ですから、イスラエルの聖なる方とは、近寄りがたい神ではなく、どうしようもない罪人を赦し、清め、引き寄せてくださる方なのです。ですから、「私の慈しみ」とは、イスラエルの聖なる方の慈しみです。

慈しみとは、ヘブライ語のヘセッドで、どんな状況でも変わらない愛です。契約を裏切らない愛です。そのことは、苦難の僕として来られた主イエス・キリストによって成就しました。この方が、人間の罪を、病を、弱さを、苦しみを、すべて担われ、わたしたちの罪が赦され、清められ、病が癒されたからです。

ですから、今日の新しいイスラエルであるキリストの体なる教会から、たとえどんなにわたしたちの生活環境が変わろうとも、神の慈しみは決して移ることはないのです。